東京では、コーヒーは単なる日常の飲み物ではなく、生活文化の延長です。
カフェに入ってコーヒーを注文し、本を数ページめくるというのは、この街ではごく普通の日常的な習慣です。
しかし、コーヒーを「体験」に変えることができる場所があります。それがMAMEYA Coffeeです。

「 MAMEYA 」は日本語で「豆の家」を意味します。創業者の國友栄一氏は、日本のスペシャルティコーヒーのサードウェーブを牽引する重要人物です。表参道コーヒーに在籍していた当時、ミニマルな「キューブ型」の空間と、こだわりのハンドドリップの儀式は、東京のコーヒー文化に新たなトレンドを巻き起こしました。
コーヒーは単に味を楽しむだけでなく、その奥深さを真に味わうには、その産地、焙煎、抽出方法を理解する必要があると彼は考えています。こうしてMAMEYAが誕生しました。このコーヒーブランドは、知識、経験、そして美学を融合させ、豆からカップに至るまで、一杯一杯の物語を紡ぎます。
清澄白河にあるKOFFEE MAMEYA -Kakeru-は、同ブランドを象徴する店舗です。MAMEYAの精神を受け継ぎながら、さらに一歩進んだ体験を提供します。完全予約制で、すべてのゲストがコーヒーの味わいの旅に浸れるよう「コーヒーセレモニー」を開催しています。
清澄白河にある「MAMEYA」に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、古い倉庫を改装した空間です。清澄白河はかつて木材の集散地として栄え、今では多くの倉庫がアートギャラリーやカフェに改装されています。そんな清澄白河に佇む「MAMEYA」は、インダストリアルな雰囲気を残しつつ、さりげないデザイン要素を取り入れています。
バーはU字型で、中央を囲むように座席が配置されている。白いユニフォームに身を包んだバリスタたちは、まるで実験室の研究者のように働いている。私にとって、ここは単なるバーではなく、舞台のようなものだ。抽出のあらゆる工程が、パフォーマンスへと昇華されている。大きな窓から差し込む光が、器具やテーブルを照らし、その工程全体が科学的であると同時に、どこか神聖なもののように感じられる。
MAMEYAの真髄はコーヒーそのものではなく、コーヒーと料理の組み合わせにあります。
こちらの体験コースでは、コーヒー一杯ごとに、ちょっとした軽食やスイーツが付きます。一見シンプルな軽食ですが、味覚の架け橋となるよう、丁寧にデザインされています。
甘酸っぱいフルーツの香りがする浅煎りのコーヒーを軽いデザートと合わせると、フルーツ酸の鮮やかさがより際立ちます。一方、深煎りの濃厚なコーヒーを一杯飲むと、塩味のデザートと調和し、苦味がまろやかな満足感に変わります。
私が最も感銘を受けたのは、「織り交ぜる」感覚です。コーヒーは単独で存在するのではなく、料理との対話を通して新たな次元を獲得します。このデザインは、コーヒーが静的なものではなく、組み合わせによって風味が変化し、より豊かな体験を生み出すことを人々に思い出させてくれます。
涼しい空間で、バリスタさんの集中した表情や器具がぶつかる音を聞きながら、味覚と嗅覚が目覚めていきます。
外の猛暑が、この「集中のひととき」を一層貴重に感じさせてくれる。コーヒーを一口飲み、その芳醇な香りを味わう時、言葉では言い表せない「救済」の感覚が湧き上がる。
MAMEYA Coffeeは単なるカフェではありません。まるで学校、舞台、そして儀式のようです。ここでは、コーヒーはただ手軽に飲む飲み物ではなく、立ち止まって真に理解する価値のある文化なのです。
私にとって、清澄白河のMAMEYAは、単なる味覚の楽しみではなく、古い倉庫の空間からバリスタの解釈まで、また、風味豊かな料理とデザートの組み合わせから夏の午後の静けさまで、完全なストーリーをもたらしてくれます。
すべてが絡み合って、忘れられない旅の一部を形成します。
旅の意義は、どれだけ多くの場所を訪れたかということではなく、途中で本当に立ち止まりたくなる瞬間を見つけることです。
清澄白河のMAMEYAでそんなひとときを過ごしました。
ここでは、コーヒーは単なる飲み物という枠を超え、人生に対する姿勢となります。
私たちは、儀式と物語の感覚をもって、すべての旅行者にペースを落とし、自分自身の静けさを体験するようお誘いします。
だから、 MAMEYAは私にとって東京に行くもう一つの理由になったのです。
東京で必ず訪れるべき場所といえば、間違いなくこの場所がリストに載るでしょう。